ネイチャーポジティブ nature positive
Key INITIATIVES
北海道大学が目指すネイチャーポジティブの実現
ネイチャーポジティブとは、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことです。私たちの暮らしや社会経済を持続可能としていくためにも重要な考え方です。
北海道大学は、1876年に創立された札幌農学校を起源とする基幹総合大学であり、人文・社会・自然科学のほぼ全ての研究領域をカバーしています。その教育・研究を支える基盤として、札幌・函館のキャンパスのほか、北海道内を中心に研究林をはじめとする広大で多様な附属施設(フィールド)を保有し、その合計面積は日本の国土の約0.2%に相当する約70,000haに及びます。
北海道大学は、これまでの長年にわたる知的資産の蓄積、その基盤となる広大で多様な物的資産を活用し、ネイチャーポジティブの実現、さらにはカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの同時達成に向けた統合的なサステイナビリティの推進に取り組んでいます。
contribution
30by30目標への貢献
30by30(サーティバイサーティ)目標は、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする国際的な目標です。ネイチャーポジティブ実現のための鍵となる目標の一つです。保護地域に加え、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM:Other Effective area-based Consavation Measures)も含めて達成していくこととされています。
北海道大学は、知的資産・物的資産の両面から30by30目標に貢献し得る研究機関であり、広大な土地の所有者・管理者として社会的責務を果たすべき経営体であるとの認識に立ち、その特徴や強みを活かして30by30目標の達成に貢献します。

生物多様性のための30by30アライアンスへの参加
北海道大学は、30by30の国内達成に向けた仕組みの構築を目指し、環境省をはじめとした行政、企業、NPO などの有志連合「生物多様性のための30by30アライアンス」に、2022年6月、国立大学法人として初めて参画し、大学全体(経営体)として30by30目標に貢献する姿勢を表明しました。
自然共生サイト認定・OECM国際データベース登録
自然共生サイトは、民間の取組によって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定した区域です。自然共生サイトのうち保護地域との重複を除いた区域が、国連環境計画世界自然保護モニタリングセンターが管理するOECM国際データベース(WD-OECM)に登録されます。
北海道大学は、30by30目標に直接的かつ自主的に貢献する具体的な行動として、キャンパスやフィールドの自然共生サイト認定やWD-OECM登録を位置づけています。2022年度の自然共生サイト(仮称)認定実証事業(環境省)への参加・協力も含め、これまでに雨龍研究林と札幌キャンパスの2箇所が自然共生サイトの認定を受け、さらにWD-OECMに登録されています。これらの認定・登録面積は合わせて約24,000haで我が国最大であり、世界的な30by30目標に貢献しています。

雨龍研究林
北海道大学が保有する研究林のうち最古にして最寒の森であり、絶滅危惧種であるイトウなど貴重な野生生物の生育地となっています。朱鞠内湖を囲む研究林北部には、北海道の代表的な森林タイプである針広混交林が分布しています。一方南部は、蛇紋岩地帯に成立するアカエゾマツの純林が比較的大きな面積を占めています。
雨龍研究林では、天然林を中心とした広大で豊かな森林を活かした教育・研究活動を行っています。「朱鞠内湖とその流域を中心とした環境変化と生物多様性保全の長期総合研究」という大テーマのもと、長期・大規模な野外試験やモニタリングを行い、森林生態系の諸機能や生物多様性の維持機構を明らかにするとともに、それらを考慮した北方森林景観の管理方法を検討しています。また、生態系の機能と保全、地域社会との関係を総合的に研究できるフィールドであることを最大限に活用して、専門分野を横断した多彩な共同研究を実施しています。

自然共生サイト認定
- サイト名称:北海道大学雨龍研究林・Hokkaido University – Uryu Experimental Forest
- 所在地:北海道雨竜郡幌加内町
- 認定面積:24,953ha(雨龍研究林全域)
- 認定日:2023 年 10 月 25日(水)(令和5年度前期認定サイト)
- 生物多様性の価値:
- 原生的な自然生態系が存する場
- 希少な動植物種が生息生育している場
- 緩衝機能や連続性・連結性を高める機能を有する場
OECM国際データベース登録
- 登録面積:24,170ha(鳥獣保護区との重複を除いた区域)
- 登録月:2024年8月
- 登録内容:Protected Planet(英語)
関連リンク
札幌キャンパス
広⼤な⽣物⽣産研究農場や研究林があり、市街地にある⼤学キャンパスとしては全国屈指の⾯積を誇ります。多くの⽂教施設が建ち並ぶ⼀⽅、札幌の原⾵景でもある原始の森や豊平川の伏流⽔の湧き出したメムの跡、希少種を含む多様な動植物相などの⽣態系が⻑年にわたり良好に保全されてきました。生態環境調査の結果を活用しながら、⽣態環境保全管理⽅針に沿って持続的な緑地の保全、管理を実施しています。
自然共生サイト
- 認定日:2024年3月18日(月)(令和5年度後期認定サイト)
- 認定面積:126ha
(札幌キャンパス敷地(177ha)から⼯作物が集積している範囲を除いた区域)
OECM国際データベース
- 登録面積:126ha(自然共生サイト認定区域全域)
- 登録状況
関連リンク
- 生態環境管理方針
- 希少種保全の取り組み
- 外来種防除の取り組み
- 支援証明書

effort
研究・教育・社会共創の取り組み
北海道大学では広大なフィールドを活かして自然科学・社会科学の分野を問わず、生物多様性の保全に資する研究・教育・社会共創の取り組みが行われています。自然共生サイト認定・OECM登録による面積への貢献だけでなく、自らが保有するサイトの生物多様性の価値を保ち、高める活動の実践も通して、健全な生態系の回復への貢献を目指します。
サステイナビリティ推進機構でも、北海道大学サステイナビリティ宣言に基づき、大学内の各部署や地域社会・産業・他大学との連携を図りながら、基礎・応用研究や人材育成および地域への社会実装の推進を通して、生物多様性保全と各社会課題の両立を果たす持続可能な社会の実現に向けて、公正かつ公平な意向を加速化させていきます。